研究概要 |
本研究では,すでに確立したRA滑膜組織を用いたin vitro骨破壊モデルを用いて,滑膜マクロファージが増殖し破骨細胞に分化する過程に関わるVEGFの役割を明らかにし、その制御が治療法につながるかを検討している。 破骨細胞誘導に関与するサイトカインや成長因子の特異的インヒビターのin vitro骨吸収系に対する効果を検討し結果、Osteoprotegerin (OPG), TNFRII-Fc融合蛋白、VEGFR-Fc融合蛋白により破骨細胞および骨吸収窩の形成我抑制された。しかし、マクロファージファージの分化調節因子で破骨細胞の分化に必須であるMCSFを阻害するMCSFR-Fc融合蛋白は骨吸収を減少させなかった。以上より、RANKL/RANK系と炎症性サイトカインであるTNFの関与が示唆された、またVEGFが滑膜マクロファージや破骨細胞前駆細胞に直接作用し、破骨細胞細胞の分化や活性化に関与している可能性が有り、骨組織の破骨細胞形成過程とは質的にも異なる可能性がある。さらに、in vitro骨破壊モデルにおける破骨細胞形成過程とRANKL-RANK系の関わりをより明らかにするため、滑膜組織培養後、経時的にRANKL, OPG, TNF, VEGFのmessageの発現をRT-PCRで検討した。RANKLの発現は培養経過中、破骨細胞細胞の形成亢進期には発現増強はみられなかった。逆に、破骨細胞細胞の形成亢進に一致しておOPG発現低下がみられた。以上より、in vitroにおける滑膜組織から破骨細胞細胞の形成には、一部RANKL/OPGのimbalanceが関与している可能性が示唆された。VEGF, TNFαの発現は2週目より亢進し、その後plateauとなった。 VEGF, VEGF受容体(VEGFR)の結合を阻害するペプチドの設計を結晶構造より行い合成した。VEGFRのVEGF結合部位のアミノ酸構造よりアミノ酸9,10,13個からなる3種類受容体部分ペプチドを合成した。現在、HUVEC, HMVECを用いてin vitroでのVEGFによる血管内皮細胞増殖促進効果の阻害作用を検討している。また、関節炎モデル動物を用いたVEGF阻害療法の有効性を検討する目的で、短期発症のコラーゲン誘発関節炎の基礎検討を行った。従来のコラーゲン誘発関節炎では発症までに期間を要し、関節炎の程度にばらつきが見られるが、type IIコラーゲンに特異的なモノクローナル抗体カクテル(Arthritogenic mAb cocktailとLPSの組み合わせにより短気に激しい関節炎が惹起できた。現在、VEGFR-Fc融合蛋白やモノクローナル抗体による関節炎阻害効果の検討に入った。
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