研究概要 |
【目的】反応性関節炎や関節リウマチの発症には菌体成分の関与が考えられている。今回、大腸菌死菌細胞壁(ECW)をフットパットに免疫し関節腔内にLPSを投与することで関節炎を誘導するモデルを樹立し,この関節炎を誘導するメデイエーターを同定した。 【方法】マウスはC57BL/6J, C3H/HeN, C3H/HeJ, MyD88KO, TNF-αKO, TNFRIKO, IL-6KOを用いた。ECWの作成は,菌体をソニケーターで処理後遠心し,上清を回収した。関節炎の誘導はECWをマウスのフットパットに免疫し,膝関節腔にLPSを注射し,その後,膝関節の組織を分離し固定後HE染色した。関節炎の評価は炎症と骨破壊について5段階のスコアで評価し,異なった観察者3人によって評価しスコア化して集計した。 【結果】C57BL/6JマウスではECWを投与後1週間目にLPSを関節腔内に投与し一週間後に関節炎を誘導できた。しかし,それぞれの単独投与では発症しなかった。LPS受容体・シグナルの検討ではC3H/HeNマウスでは関節炎は誘導できたが,C3H/HeJマウスではできなかった。また,MyD88KOマウスでも誘導できなかった。メデイエーターの検討ではIL-6KOマウスでは関節炎を誘導できなかったが,TNF-αKO, TNFRIKOマウスでは関節炎を誘導することができた。 【考察】ECWを免疫することによりLPSに対する反応性を獲得し、LPSが関節腔内に投与されるとTLR4/MyD88を介して関節炎を誘導し、この関節炎はTNF-αを介さず主にIL-6によって誘導されることが明らかになった。
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