研究概要 |
制御性T細胞の分化を決定するマスター遺伝子として重要な分子であるFOXP3の発現と特にヒトリンパ球機能との関連を多面的に解析することを目的として、以下の実験を行った。1)野生型および変異ヒトFOXP3遺伝子をレトロウイルス発現ベクター(pLXSN)に組み込み、パッケージング細胞株(PA317)にトランスフェクションして安定なウイルス産生細胞を樹立した。この産生細胞の培養上清中のウイルスを凍結保存(-70℃)し、その後の実験に使用した。このウイルスを、既にHVS(Herpesvirus saimiri)により樹立しているIPEX患者(FOXP3遺伝子変異を同定した患者)末梢血由来T細胞株に感染させ遺伝子導入した。遺伝子導入細胞をG418により選別し、細胞表面抗原の差異を検討した。活性化抗原を含めて調べたT細胞関連抗原のいずれでも野生型または変異遺伝子を導入したT細胞株間で明らかな相違は認められなかった。T細胞をPMA/ionomycinで刺激した後にサイトカイン産生能を検討したが、野生型または変異遺伝子導入細胞株間で明らかな相違は認められなかった。 2)FOXP3の塩基配列から予想される合成ペプチドでウサギを免疫してポリクロナール抗体を作製して、細胞質内FOXP3同定の可能性を検討した。細胞表面抗原(CD4,CD8,CD19)を染色した後、細胞膜のpermialization/fixationをし、抗体を反応させて細胞質内FOXP3を染色(間接法)して、Flow cytometryで解析した。FOXP3の発現を認めるT細胞株では、ある程度のFOXP3発現量が確認されたが、正常者末梢血リンパ球においては解析に十分な輝度を得ることができなかった。
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