研究概要 |
制御性T細胞の分化決定に重要なマスター遺伝子であるFOXP3の発現とヒトリンパ球機能との関連を多面的に解析することを目的として、平成16年度に引き続き以下の実験を行った。 1)坑ヒトFOXP3抗体を作製して、細胞質内FOXP3同定法の開発を進めた。この抗体を用いてヒトFOXP3のリンパ球内局在を共焦点顕微鏡で調べ、細胞質内の存在を確認した。そこで、細胞表面抗原(CD4,CD8,CD19)の染色後に、細胞膜のpermialization/fixationをし、細胞質内FOXP3を染色(間接法)して、Flow cytometry (FCM)で解析した。FOXP3を発現するT細胞株では、細胞質内FOXP3をFCM法で確認することが可能であった。正常者末梢血リンパ球で同様の方法で細胞質内FOXP3の同定を試みたが、細胞質内の発現が非常に少なく定量的な解析は困難であった。そこで、細胞膜のpermialization/fixationの条件を種々に変化させてFCM法の可能性を検討した結果、試薬や反応時間の変更によってある程度のFOXP3を同定可能となった。 2)上記FCM法による細胞質内FOXP3簡易同定法を臨床に応用して、各種自己免疫疾患(若年性特発性関節炎、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、シェーグレン症候群など)の患者末梢血リンパ球におけるFOXP3発現細胞の比率を比較検討した。細胞表面抗原(CD4,CD8,CD19,CD25,CD69)との二重染色でFOXP3陽性細胞の比率を各疾患ごとに比較した。しかし、疾患ごとに若干の差異は認めたが、有意の結果は得られなかった。免疫抑制剤治療中で非活動期の患者が多かった影響も推測され、さらに症例数を増やして病期による変化等も検討する必要があると考えられた。
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