制御性T細胞の分化決定に重要なマスター遺伝子であるFOXP3の発現とヒトリンパ球機能との関連性を明らかにするために、以下の研究を行った。 1)野生型/変異ヒトFOXP3遺伝子をレトロウイルス発現ベクターに組み込み、パッケージング細胞株にトランスフェクションしてウイルス産生細胞を樹立した。その培養上清を用いて、FOXP3欠損患者末梢血由来T細胞株に遺伝子導入した。活性化抗原を含めたT細胞関連抗原の差異を検討したが、野生型または変異遺伝子を導入したT細胞間で明らかな相違を認めなかった。T細胞活性化後に各種サイトカイン産生能を検討したが、野生型または変異遺伝子導入細胞株間で明らかな相違を認めなかった。 2)末梢血リンパ球を種々の刺激因子で活性化して、リンパ球活性化に伴うFOXP3発現の変化を解析した。まず、正常人末梢血リンパ球を各種刺激で活性化し、FOXP3発現量の変化をRT-PCR法・Western blot法にて解析した。刺激前にRAN・蛋白レベルで発現していたFOXP3は、各種刺激後でその発現量に明らかな変化は認められなかった。 3)ヒトFOXP3塩基配列から予想される合成ペプチドでウサギを免疫しポリクロナール抗体を作製して、細胞質内FOXP3同定法の開発を進めた。細胞膜のpermialization/fixation後に細胞質内FOXP3を染色して、Flow cytometory(FCM)で解析した。FOXP3発現T細胞株では、細胞質内FOXP3をFCM法で確認できた。正常者末梢血リンパ球では発現が非常に少なく定量的な解析が困難であったため、さらに細胞膜処理条件を種々検討してFOXP3をある程度同定可能な条件を決定した。 4)FCM法による細胞質内FOXP3簡易同定法を臨床応用して、各種自己免疫疾患患者末梢血リンパ球におけるFOXP3発現細胞の比率を比較検討した。しかし、疾患ごとに若干の差異は認めたものの、有意の結果は得られなかった。
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