研究概要 |
【緒言】シトリン欠損症では新生児〜乳児期に肝内胆汁うっ滞症状(NICCD)を呈し、その後見かけ上健康な時期(適応期、代償期)を経て、何らかの原因で代償不全に陥った場合に重篤な成人発症2型シトルリン血症(CTLN2)を発症すると考えられている。CTLN2患者では以前より豆類などの高蛋白質食を好み糖質を嫌うことが報告されているが、今回我々はNICCDと診断された7症例について食事調査を行いその食嗜好について検討したので報告する。 【症例】症例は調査時年齢1〜15歳の7症例で性別は男児3例、女児4例。全例遺伝子診断にてSLC25A13遺伝子の変異が確認されている。 【方法】母親に1日分の食事献立内容を食品ごとにグラム単位で記入をお願いし、1人に付き1週間分を提出してもらった。その調査表をもとに管理栄養士が各栄養素の摂取量を計算した。 【結果】1週間の摂取熱量、蛋白質、糖質、脂質の平均値を求め、摂取エネルギー比率を計算した。摂取カロリーは症例1,2,4,7で本邦の平均値より多く、症例3,5,6で低値であった。7名の脂肪エネルギー比率の平均は46.2±6.0%であり本邦の標準値27-29%をはるかに越えていた。逆に7名の炭水化物エネルギー比率の平均は34.9±6.3%で標準値の55-57%より低値であった。 【考察】多くのNICCD患児は1歳までに肝機能は正常化し、見かけ上無症状となる。しかし、離乳食が開始されると甘いジュースや米飯を嫌い、豆類や卵、乳製品、揚物など高蛋白質、高脂肪食品を好むという特徴的な食嗜好が現れる。患児は細胞質内にNADHを産生する糖質を嫌い、細胞質のアスパラギン酸を増やすと同時にNADHの再酸化を促進する蛋白質の摂取を好み、エネルギーを獲得しやすい脂質を摂取することにより代償期を維持しているものと推察された。今後ピルビン酸やクエン酸などの投与により食嗜好が変化の有無を調査し、治療薬となりうるか検討を重ねたい。
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