1)ENUによるメダカ突然変異体の作成およびスクリーニング ENU処理したHd-rR雄メダカに雌メダカを交配し、F1メダカを得た。このF1メダカの雄雌を交配してF2メダカを得て、その表現型を解析した。100系統余りの変異体を得ることができた。その90%以上は骨格異常を示す変異体であり、眼の発生異常、鰭の形態異常を認める変異体も見られた。本研究の目的とする脳の形態異常を示す系統は2系統得られたが、心大血管系に異常を示す変異体は得られなかった。2)変異体の表現型の解析 脳の形態異常を示す2系統について組織学的に解析したが、いずれも脳の形態異常および低形成が認められた。脳の形態形成に関与すると思われるShh、Wnt1、Bmp4、Zic、Msxなどの遺伝子発現をRT-PCRやin situ hybridizationにより調べたが、明らかに発現異常を示す遺伝子は見出せなかった。3)変異体の原因遺伝子の同定 脳の形態異常を示す2系統についてその原因遺伝子を同定するために、ポジショナルクローニング法を行った。ヘテロ接合体雄と北日本集団に属する近交系のHNI系統の野生型雌を交配し、F1世代を得た。このF1の雌をHd-rR系統のヘテロ接合体雄と戻し交配することにより、野生型約20匹とホモ接合体を約100匹得ることを試みた。ところが、この交配および変異体からのDNA抽出の段階で、感染症が発生し、系統を失ってしまった。そこで、凍結精子による系統の再生を試みたが、再び感染症が発生し、系統を再生することはできなかった。このため、ENUによるメダカ突然変異体の作成およびスクリーニングを再開せざるを得ない状況になり、研究期間内にポジショナルクローニングを進めることができなかった。
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