Yeast-two-hybrid systemを用いて、マウス腎臓由来cDNAライブラリーをスクリーニングし、腎糸球体特異蛋白であるポドシンとの結合が予想される13クローンを得た。このうち7クローンは、リボゾーム蛋白や熱ショック蛋白であった。3クローンはネフリン、CD2AP、ポドシンであった。未知の3クローンのうち発現が腎臓に比較的特異的な1クローンについてPCR-RACE法を用いてcDNAの全コード領域を単離した。コード領域は921塩基より成り、306アミノ酸をコードしていたが、明らかな機能モチーフは認めなかった。オルソログはヒトで確認され、アミノ酸の一致率81%、類似率92%であった。この遺伝子cDNAにFLAGエピトープを付加し、ポドシンを発現させたNIH3T3細胞(NIH-pod細胞)に導入した。抗FLAG抗体を用いて免疫沈降を行ったところ、この新規蛋白とポドシンとの結合が確認された。一方で、この新規蛋白をGSTとの融合蛋白質として大腸菌で発現させ精製、NIH-pod細胞抽出液とのプルダウンアッセイにおいてもポドシンとの結合が認められた。この新規蛋白に結合する分子を同定するため、yeast-two-hybrid systemを用いてマウス腎臓由来cDNAライブラリーをスクリーニングし、8クローンを得た。6クローンはリボゾーム蛋白であり、2クローンはポドシン、Ahalであった。Ahalは熱ショック蛋白質90(HSP90)と結合し、HSP90のATPase活性を増加させる働きをしている。HSP90はアクチン線維と結合し細胞骨格の形成に重要な働きをしている。本研究で同定した新規蛋白は、Ahalとの結合を通じ、HSP90をポドシンとネフリンめ近傍にリクルートすることで、アクチン線維の形成に関与し、糸球体上皮細胞の形態の維持の一端を担う可能性が示唆された。
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