末梢血単球が表面抗原発現により、少なくとも2つの亜群より構成されることが知られている。今回の研究では、それぞれの亜群が急性炎症性疾患症例の解析ならびにin vitroでの検討から、特有の機能を有することが明らかにされた。現在、これらの異なる単球が急性炎症制御について果たす役割の特徴と、これらの機能に対する薬理学的制御の可能性について引き続き検討している。 末梢血単球はCD16陽性CD14弱陽性のminor亜群と、CD16陰性CD14強陽性のmajor亜群より構成されている。今回の検討では、以下の点が明らかにされた。 1)minor亜群はケモカイン受容体であるCCR2を欠損し、major亜群はこれを強く発現する。 2)minor亜群はHb・Hp受容体であるCD163をほとんど発現せず、major亜群はこれを強く発現する。 3)minor亜群はin vivoで一定レベルのHO-1を産生している。 4)major亜群はin vitroでの刺激により1L-10を強く産生するが、minor亜群は全く産生しない。 5)steroid投与はin vivoならぴにin vitroで共にCD163発現を誘導する。 6)steroid投与により、minor亜群の細胞死が誘導され、minor亜群構成比率は低下する。 以上の結果より、異なる単球亜群の炎症制御に果たす役割の違いが明らかにされた。すなわち、major亜群はCD163へのHb・Hp複合体の結合により抗炎症性サイトカインIL-10を産生、さらにHO-1産生が誘導される。このような機構はステロイド存在下でCD163抗原発現が増強することによりさらに亢進する。一方、minor亜群は常時in vivoにおいてHO-1を産生しており、日常的に抗炎症機能を発揮し組織におけるホメオスタシスの維持に貢献している可能性が示唆された。一方、このようなminor亜群の機能はステロイドにより細胞死が誘導されることにより抑制される。したがって、ステロイドにより炎症制御戦略を考える上で、異なる単球亜群の機能的特徴を理解することは重要であることが示された。 現在、これらの知見を確認し、さらに検討を加えている段階である。
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