研究概要 |
タンデム質量分析新生児マススクリーニングにより、約30万新生児を検査して35名の対象疾患患者を診断(頻度約1:8,400出生)し、対象疾患頻度からみて有意義なマススクリーニングであることを示せた。精度に関しても、直近2年の研究期間においては、疑陽性率0.09%、的中率16%と適正であった。疾患の種類としては、プロピオン酸血症やメチルマロン酸尿症などの有機酸代謝異常症が多く、また脂肪酸酸化異常症も偏りなくまた希ではなく発見されており、その多くが、食事療法や飢餓時の医療処置といった治療により突然死や脳障害発生を防止できている。 短鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症のスクリーニングで、2例の陽性者が発見され、化学診断としてはSCAD欠損症と判断されたが、酵素活性測定や遺伝子解析は実施が困難であり、1例には無症状の同胞が存在したため、対象疾患とはしないこととした。 乳児期発症チロシン血症1型患者の新生児期濾紙血チロシン濃度が上昇していたことから、チロシン濃度高値例の2次スクリーニング法を検討したが、精度が不充分で合った。また新生児期にチロシン濃度が充分に高くない本症患者の存在も報告されており、精度のよい1次スクリーニング法が望まれた。 シトリン欠損症スクリーニングでは、シトルリンと他の数種のアミノ酸の高値を組み合わせた指標を用いた場合見逃し例が多いことが判明した。シトルリン・セリン比などを組み合わせたスクリーニング精度の検討を行っている。 発見患者に対する治療の評価を行う上での生化学的指標として、血中アシルカルニチンおよび有機酸濃度が適切かどうか検討し、良好な成長発達を得ている3例のスクリーニング発見グルタル酸尿症患者において、有用性を確認した。
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