研究概要 |
11q23転座型白血病細胞株(FLT3のD835にpoint mutationを有する2株とFLT3に分子異常を有さない8株)に対するFLT3阻害剤PKC412の効果を種々のパラメータを用いて検討した。 1.PKC412のDNA合成能に対する効果 ^3H-thymidine uptake法の検討で、D835にpoint mutationを有する株では非常に強く(PKC412 200nMで90%以上)、有さない株でもかなり強く(PKC412 200nMで60%以上)uptakeが阻害された。 2.PKC412の細胞回転に及ぼす効果 PKC412(200nM)添加前、72時間後に、flow cytometerを用いて、Go/G1期、S期、G2/M期の割合の変化を検討したところ、Go/G1 arrestが誘導されることが明らかとなった。D835 mutationの有無で差は認められなかった。 3.PKC412のアポトーシス誘導能 PKC412(200nM)添加前、72時間後にFITC標識Annexin VとPIで染色し、Flow cytometerを用いて、前期ならびに後期アポトーシス誘導の割合を検討したところ、D835 mutationを有する株では非常に強く(PKC412 200nMで60%以上)、有さない株でもかなり強く(PKC412 200nMで40%以上)アポトーシスが誘導された。 4.PKC412による細胞回転停止・アポトーシス誘導機構の検討 PKC412(200nM)添加前、72時間後にcell lysateを作製し、シグナル伝達分子、細胞回転関連分子、アポトーシス関連分子の発現とリン酸化の変化をWestern blot法で検討した。PKC412添加前はSTAT5,MAPK,Aktが構成的にリン酸化されていたが、PKC添加後は脱リン酸化され、FLT3シグナルを伝達する3経路ともブロックされていた。Cyclin DあるいはEの発現低下が認められ、細胞回転停止に関与していると考えられた。Bcl-2 subfamilyに属するBfl-1の発現低下やBcl-3 only subfamilyに属するBimの発現増強が認められ、アポトーシス誘導に関与していると考えられた。
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