Down症候群(DS)児における一過性骨髄増殖性疾患(TMD)と急性巨核芽球性白血病(AMkL)の両方でGATA-1遺伝子の異常があることが報告されたが、DS児のTMD全例がAMkLへ移行するわけではないことから移行にはなんらかの付加的遺伝子異常が生じることが必要と思われる。本年度はDNAマイクロアレイ法を用いてDS児のTMDとAMkLの腫瘍細胞について遺伝子発現を網羅的に検出した。TMDとAMkLにおける芽球はCD41またはCD42を発現していることが特徴的であり、各患者より保存してある末梢血単核球からAUTO MACSシステム(Milteyi Biotec社)を用いて芽球を純度95%以上で単離、採取した。採取した芽球からTRIzol(Invitrogen)を用いてtotalRNAを単離し、アジレント2100バイオアナライザー(Agilent社)にてRNAの質をチェックした後、50ngのtotalRNAからLow RNA Input Fluorescent Linear Amp Kit(Agilent社)を用いてcyanine3またはcyanine5で標識したcRNAを合成し、合成したcRNAをHuman whole genomeオリゴDNAマイクロアレイ(Agilent社)と18時間ハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションを行ったアレイスライドグラスを洗浄、乾燥後、DNAマイクロアレイスキャナー(Agilent社)にて読み取り、データの画像化および数値化を行った。次年度は引き続き読み取り、データ画像化および数値化を行い、集積したデータをデータ解析ソフトウエアーGeneSpring(シリコンジェティクス社)にて解析し、各疾患群間で有意に発現差の認められる遺伝子を抽出し、TMDからAMkLへの移行に関与する遺伝子の同定を試みる。
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