Down症候群(DS)児の一過性骨髄増殖性疾患(TMD)と急性巨核芽球性白血病(AMkL)の両方でGATA-1遺伝子に異常があることが報告されたが、DS児のTMD全例がAMkLへ移行するわけではないことから移行にはなんらかの付加的遺伝子異常が生じることが必要と思われる。本研究では、DNAマイクロアレイ法を用いてDS児に発症したTMDとAMkLの腫瘍細胞について遺伝子発現を網羅的に検出した。TMDとAMkLにおける芽球の特徴はCD41またはCD42を発現していることであり、TMD患者7名とAMkL患者4名の保存末梢血単核球からAUTO MACSシステムを用いて芽球を純度95%以上で単離し、totalRNAを抽出、2100バイオアナライザー(Agilent社)にてRNAの質をチェックした。その結果使用可能なRNAは各疾患3名ずつであった。これら6名のtotal RNA 50ngからLow RNA Input Fluorescent Linear Amp Kit (Agilent社)を用いてCy3またはCy5で標識したcRNAを合成し、Human whole genomeオリゴDNAマイクロアレイ(Agilent社)とハイブリダイズさせた。アレイスライドグラスを洗浄、乾燥後、スキャナー(Agilent社)にて読み取り、データの画像化および数値化を行った。集積したデータをデータ解析ソフトウエアGeneSpring(シリコンジェティクス社)にて解析し、各疾患群間で有意に発現差の認められる遺伝子の同定を試みたが、各群3例ずつのため統計学的に明らかに有意差の認められる遺伝子の発現の差異は認められなかった。
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