外胚葉形成不全免疫不全症候群はNF-κB活性化に関わる因子の異常で起こり、NEMO遺伝子の異常でおこる6症例を日本において集積し、ヒトT細胞分化におけるNEMOの関与について解析した。特にそのうち一例は、NEMO遺伝子の4.4kbの重複が存在し、細胞系列によりNEMO蛋白の発現が異なる、Reversion Mosaicismの症例であった。同症例では末梢血においてCD4+T細胞数の低下を認め、またCD8+T細胞は細胞数の低下を認めないもののTCRVβ解析によりVβ16+細胞の著名な増加、TCRVβの偏りを認め、正常のT細胞の分化発育が障害されていた。続いてNEMO発現別(正常、低発現)での細胞数を検討したところ、単球、好中球、B細胞においてはほとんどの細胞がNEMO低発現細胞であったが、T細胞においてはNEMO正常発現細胞が大多数であった。つまり、NEMO正常発現細胞がNEMO低発現細胞に比べ分化発達生存において有利であることが示唆された。 一方、他の非モザイク外胚葉形成不全免疫不全症候群症例においては、T細胞数、TCRVβ使用の偏りはなく、NEMO hypomorphic mutationではT細胞分化発達生存に異常をみとめなかった。FACSを用いてNEMO発現量を半定量したところ、上記NEMOモザイク症例ではNEMO低発現細胞のNEMO発現量はほとんど認めない状態であり、NEMO非モザイク症例とのT細胞分化発達生存における差異はNEMO残存活性の差に基づくことが推測された。 以上NEMO遺伝子異常に基づく外胚葉形成不全免疫不全症候群症例の解析より、ヒトT細胞の分化発達にはNEMOが重要な役割を果たしていることがわかった。
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