小児白血病では染色体転座によって生じるキメラ遺伝子が発症に関与している。このキメラ遺伝子は白血病細胞に特異的に発現しているため、白血病の治療法としてキメラ遺伝子を標的とする分子治療法が注目されている。私達は、遺伝子の発現を強力に阻害するRNAiを用いてキメラ遺伝子の発現を抑制することが白血病に対する有力な治療法になることを着想した。しかし、これまでに検討してきた白血病症例の中には未だキメラ遺伝子が同定されていない患者固有の染色体転座があり、RNAi治療の開発において大きな障害になっている。 私たちは今回、t(15;17)(q13;q11)転座を有する急性骨髄性白血病細胞、およびt(2;2)(q21;q35)転座を有する滑膜肉腫細胞を対象として、RNAiによる治療法を開発することを検討している。いずれの転座も今までに報告されていないものであるため、これらの転座よって生じたキメラ遺伝子を同定する必要がある。 t(15;17)(q13;q11)転座に関しては、cDNAライブラリーの作成を行った。さらに転座切断点を含む可能性のあるクローンの同定を行った。また、t(2;2)(q21;q35)転座に関しては、一方の転座切断点が、悪性腫瘍でキメラ遺伝子を構成することの多いPAX3の遺伝子座に相当するため、PAX3の転座好発部位にプライマーを作成し、3'RACE法によってクローニングを行いキメラ遺伝子のスクリーニングを行った。その結果、キメラ遺伝子を含む可能性のある有力なクローンが得られた。
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