研究概要 |
原因不明の低身長児,特に胎内発育遅延(IUGR)に伴う低身長児,を対象にインスリン様成長因子(IGF)受容体1型(IGF-IR)の遺伝子解析を行い,IGF-IRの異常に起因する成長障害を検討した.その結果2例のIGF-IR遺伝子異常を見出した 1.症例1 (1)IUGRで出生した6歳女児にIGF-IRのproreceptor(proIGF-IR)がαとβ subunitに切断されるcleavage部位に,Arg709Glnをヘテロで認めた。制限酵素を用いた検討により,同様にIUGR性低身長を示す母親にも同じ変異を認めた。 (2)同じ変異を有する母親の線維芽細胞では,未切断のproIGF-IR蛋白がコントロールの約3倍に増加し、一方正常のIGF-IR蛋白は60%に減少していた。 (3)[^<125>I]-IGF-I結合実験では,線維芽細胞上のIGF-Iの結合部位(IGF-IR)がおよそ半分に減少しており,IGF-I投与に伴う細胞増殖,およびIGF-IRのβ鎖の自己リン酸化は著明な低下を示した. 2.症例2 (1)IUGRで出生した4歳女児にIGF-IRのα鎖に,Arg431Leuをヘテロで認めた。IUGR性低身長を示す母親にも同じ変異をヘテロで認めた。 (2)IUGRに伴う低身長として成長ホルモン(GH)治療は受けたが,GH投与による血中IGF-Iの上昇は認めるも身長の改善は認められなかった. (3)本例で認められたアルギニンからロイシンへの置換はアミノ酸の極性が極めて変化するため,IGF-IRのα鎖の構造変化を来たし,IGF-Iとの結合に障害が起きるものと考えられる. 症例1はproIGF-IRからIGF-IRへのプロセッシング障害による正常IGF-IRの量的不足により,症例2はIGF-IRのα鎖の構造変化によるIGF-Iの結合障害により,IUGR性低身長を来したことが示唆された。
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