本研究はヒトの発達に伴う神経回路網の形成過程を明らかにすることを目的とする。脳各部位のボリュームと白質神経線維の走行ならびに連絡性の年齢的変化をMRI画像から解析する。同時に神経線維の連絡性の成熟過程を脳波二次解析から解明する。 1、MRIによる神経回路の計測 撮影は3次元フーリエ変換を用いた3次元fast SPGR法で行う。スライス幅2mm、マトリックス256×256で全脳をスキャンする。画像標準化や脳ボリューム計測はMEDxソフトウエアーを使用する。得られた画像データを解析用コンピュータに転送し、まず三次元MRI画像に再構成し、脳表の主要な脳溝を同定する。次にMRI拡散強調画像を三次元的に撮影する。1スライスごとに計測した白質線維を加算しその用量を算出する。作成した拡散テンソルtractographyを三次元MRI上に重ね合わせ、脳各部位の連絡を確認する。昨年度は、画像解析の方法を確立し、今年度は小児データの蓄積を開始した。 2、神経生理的検討 脳波はデジタル脳波計を用い、標準10-20電極法で安静閉眼時に記録を行う。両耳朶連結を基準電極として全脳各部位に電極を貼付し記録する。脳波記録は安静閉眼状態で記録し、体動によるアーチファクトが混入した部分は除外する。脳波記録条件は、高周波フィルター;60Hz、低周波フィルター;0.5Hz、時定数;0.3、sampling;60Hzとする。記録した脳波をフーリエ変換し、各脳部位の脳波パワーを計測する。脳波パワーは脳波を定量化する指数であり、脳の活動性の指標となる。同様に計測した脳波を利用し、各脳部位間の線維の連絡性を脳波コヒーレンスとしてコンピュータで計算する。昨年度は方法論を確立し、本年度は小児のデータ集積を開始した。 来年度においてもデータを蓄積すると同時時に得られたデータの解析を行う。
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