研究概要 |
全国から診断を依頼された62例のLeigh脳症患児から得た培養細胞の検索により31例の病因を明らかにした。その内訳はPDHC異常症5例、複合体I欠損症4例、複合体IV欠損症4例、ミトコンドリアDNA異常症18例(T8993G変異15例、T8993C変異2例、A8344G変異1例)であり、これまでの我々の研究によりLeigh脳症患児の半数の病因は判明したが、なお半数の病因が不明である。この中ではビタミンB1反応性PDHC異常症が4例みられたことより、本症の頻度が高いこととLeigh脳症患児におけるビタミンB1大量療法の有用性が判明した。 新生児早期から筋緊張低下、呼吸障害、高乳酸血症、頭部MRI所見よりLeigh脳症と診断された男児例の検索により[1-^<14>C]ピルビン酸脱炭酸能が著明に低下していた。[1-^<14>C]ピルビン酸脱炭酸能は生きている細胞内において、細胞内のピルビン酸がミトコンドリア膜を通過した後、ミトコンドリア内においてCO_2が発生するまでの代謝経路内の状態を表わしている。従って、ミトコンドリア酵素活性(PDHC活性,αKGD活性,COX活性)、ミトコンドリア内のピルビン酸濃度、ミトコンドリア内のTPP濃度がこのピルビン酸脱炭酸能の低下に関与している。しかし本患児のミトコンドリア酵素のPDHC活性、αKGD活性、COX活性は全て正常であった。 すなわち、本患児はこれまでに診断し得たLeigh脳症患児の代謝異常症とは異なるパターンを呈しており、Leigh脳の病因として新たな代謝障害(ミトコンドリア内のピルビン酸濃度、ミトコンドリア内のTPP濃度)が関与した可能性があることが判明した。
|