研究課題/領域番号 |
16591038
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉良 龍太郎 九州大学, 大学院・医学研究院, 助手 (70304805)
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研究分担者 |
酒井 康成 九州大学, 大学病院, 助手
鳥巣 浩幸 九州大学, 大学病院, 医員
杉山 博之 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (20124224)
高嶋 幸男 国際医療福祉大学, 大学院, 教授 (70038743)
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キーワード | 脳 / 左右差 / 遺伝子発現 / 遺伝子多型 / 脳機能 / 記憶 / グルタミン酸受容体 |
研究概要 |
動物のレベルでは、C57BL/6マウス(9週令)オス4匹の大脳(海馬)、小脳の左右対称部位からmRNAを抽出し、マイクロアレイ(mouse oligo chip 30K,日立)を用いて解析した。海馬にて、ポジティブコントロールの中央値で補正後の値について左右の比の平均が2以上あった遺伝子を計9個認めた。小脳では0個であった。これらの遺伝子の中からmATPase6,mnd4を左右差がある遺伝子の候補として選定し、rebosolmal protein 18s(17番染色体)をコントロールとして発現量の定量を行ったが、明らかな左右差を見出すことことはできなかった。 次に、ヒトの個体レベルにおいて、脳機能とくに記憶に関する遺伝子の検討を行った。20-24歳の大学生102人(男51人、女51人)を対象に、Wechsler Memory Scale-Revised(WMS-R)を施行し、次に同意を得た上でDNAを抽出、グルタミン酸受容体GRM3遺伝子上の6個の一塩基多型(SNP)を解析した。各SNPを遺伝子型に分け、それぞれについてWMS-Rの合成得点指標および下位項目の平均点を算出した。SNP4のTTの遺伝子型で図形の記憶・視覚性記憶範囲・視覚性再生Iにて、またSNP5のCCの遺伝子型で図形の記憶にて有意に低得点であった。このうち図形の記憶においては、2個のSNPの組み合わせにても解析し、SNP2GG-SNP5CC、SNP3TT-SNP5CC、SNP4TT-SNP5CCの群はそれ以外の群に比して有意に低得点であった。GRM3は前シナプス終末に分布し、シナプス後膜に存在するNMDAなど他のグルタミン酸受容体の機能を制御するとされる。近年その遺伝子多型について統合失調症との関連が報告され、高次認知機能との関係が注目されつつある。今回の結果からGRM3の多型が視覚系記憶の個人差に関与していることが示唆された。
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