研究課題
基盤研究(C)
本研究では、樹状細胞または好中球によるがん免疫療法・細胞療法の可能性を検討し、難治性小児悪性腫瘍に対する新たな治療法を開発することを目的とした。1.樹状細胞療法樹状細胞(DC)療法を実施した症例のうち1例は長期間寛解を維持、2例では一時的に腫瘍の増大が抑制された。抗腫瘍効果の見られた例ではDC投与後に末梢血中のCD8陽性HLA-DR陽性T細胞数、IFN-γ産生性CD8陽性T細胞数の増加が見られた。試験管内における検討でも、腫瘍特異的ペプチドをパルスしたDCによって感作されたT細胞は腫瘍細胞を特異的に破壊した。DCの機能解析の一環として、免疫賦活能に差がある成人末梢血DCと臍帯血DCにおける遺伝子発現をマイクロアレイにより検討したところ、免疫寛容誘導に関与すると報告されているカルグラニュリンが臍帯血DCで高発現している、細胞周期関連遺伝子の発現が臍帯血DCで高い、Th1関連サイトカイン(IL-12B、IL-15、IL-18)の発現が成人末梢血DCで高い、両DCともに成熟とともに炎症性サイトカインの発現が増加する、などが明らかとなった。2.好中球TRAILによる抗腫瘍療法好中球をIFN-γで刺激することによりTRAILの発現が増強し、好中球の表面にTRAIL分子が発現されるとともに、培養液中へ可溶性TRAILが分泌された。TRAIL発現好中球は、白血病細胞株のJurkat細胞にアポトーシスを誘導し、この作用は抗TRAIL抗体により部分的に抑制された。即ち、好中球が従来知られた機序とは異なるメカニズムで抗腫瘍効果を持つことが明らかとなった。IFNは種々の癌腫に対する治療薬として臨床応用されてきたが、IFNの抗腫瘍効果はIFNの直接作用に加え好中球TRAILを介した作用である可能性が示唆され、IFNと好中球の組み合わせによる新たな抗腫瘍療法の開発が期待される。
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