純化した単球(CD14陽性細胞)をマイクロアレイで検討した結果、Response gene to complement 32(RGC32)遺伝子が健常者と比較して高IgE症候群で最も高値であったが、、この結果をもとに、高IgE症候群患者8名(5-34歳、中央値16.5歳)、健常者15名(3-20歳、中央値11歳)、疾患コントロールとしてアトピー性皮膚炎の患者17名(1-34歳、中央値8歳)を対象として、末梢血単核球を用いて定量的PCR法にて各群におけるRGC32遺伝子発現量を定量した。その結果、β-actin遺伝子発現量で補正したRGC32遺伝子量の中央値は、高IgE症候群、健常者、アトピー性皮膚炎患者それぞれで、2.2、0.6、0.7であり、3群間で発現量に統計学的有意差がみとめられ、明らかに高IgE症候群で高値であり、高IgE症候群を診断するために有用であると考えられた。次に、高IgE症候群の病因・病態をさらに明らかにするために、CD14陽性細胞に関してマイクロアレイ解析を追加し詳細に検討した。その結果、以前の結果と同様にCD14陽性細胞ではLysosome関連遺伝子群とCell growth and maintenance関連遺伝子群がコントロールと比較して有意に発現が高かった。またCD14陽性細胞やブドウ球菌で刺激した細胞で高IgE症候群で発現が異常であるものから3遺伝子を選択し、高IgE症候群患者末梢血からDNAとcDNAを抽出し、それらの塩基配列を検討したが、異常をみとめなかった。2005年の免疫学会で東京医科歯科大学の峯岸らが、常染色体劣性遺伝形式の高IgE症候群に関して、Tyk2がその責任遺伝子である可能性を報告した。この結果をもとに、この研究の対象者である高IgE症候群患者においてTyk2遺伝子を解析した結果、Tyk2遺伝子には異常をみとめなかった。Tyk2遺伝子異常は高IgE症候群のごく一部を説明するものであると考えられた。 以上の点に関して、日本免疫学会等にて発表し、また、Journal of Clinical Immunology誌に発表した。
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