小児に発症する急性白血病の中で、もっとも頻度が高いのは急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。小児ALLは化学療法の進歩によって約70%の患児が治癒するようになったが、30%の患児では造血細胞移植術を含む種々の治療に抵抗して致死的な経過をたどる。本研究は、造血細胞移植術を繰り返し実施するダブルトランスプラント療法を確立することが目的である。 従来の造血細胞移植術で寛解を維持できない治療抵抗性の小児白血病患児を対象に、移植前の単回大量化学療法で体内に残存する白血病細胞を根絶することは困難である。従来の考え方では難治性の場合は制癌剤が大量となりすぎ、重篤な臓器障害を発症するか、移植片宿主病(GVHD)を増悪させることが多かった。このようなリスクを回避しながら抗腫瘍効果を上げるため、まず安全な自家移植術を利用して大量化学療法を計画した。初年度である平成16年度は末梢血CD133陽性細胞純化手技を確立して自家移植を実践した。2例(17歳、8歳)の再発ALL患者において、再寛解導入療法終了後2-3か月の時期に、リンパ球に発現しない表面抗原であるCD133を利用し、末梢血CD133陽性細胞を採して免疫磁気ビーズ法で純化した。純度は90%以上、回収率も60%であり、臨床的に有用なレベルであった。このうち一例は母親からのHLA不適合移植術とのダブルで実施し、移植後10か月を経過して完全寛解を維持している。二例目は純化末梢血CD133陽性細胞を用いた自家移植術を安全に実施した段階で、完全寛解を保つている。以上のように、細胞の採取・純化および自家移植術の実施まで計画通り進行しており、平成17年度実施症例を増やして検討する。特に同種移植術の移植前化学療法については、画一的な方法を採用しにくい状況が明らかになりつつあり、患者の既治療歴を考慮したレジメンの確立を検討する。
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