ALLなど急性白血病の同種移植術後の原病再発は、造血細胞移植術の治療成績を左右する最も大きな問題である。本研究では、小児ALL治療における同種移植術の治療成績向上を目指し、1回の毒性が強い治療で根治を目指すのではなく、移植直前の体内腫瘍細胞量を可能な限り少なくするための手段として、小児ALL患児の腫瘍細胞に発現しないCD133抗原を利用した。 CD133抗原はヒトに特有の血球分化抗原で、非常に幼弱な造血前駆細胞に発現することが知られている。CD34抗原のようにマウスに発現していないため、前臨床段階の動物試験ができないが、80%程度がCD34抗原とダブルポジティブである。したがって、CD34陽性細胞移植術の知見で十分対応できることが予測されたが、本研究によって実際に移植術に使用できることが証明された。小児に最も多い腫瘍である急性リンパ芽球性白血病では、腫瘍細胞にCD34抗原が高頻度に発現するため、CD34抗原を利用した自家移植は腫瘍細胞混入の観点から問題があり、CD133抗原を利用することの意義は大きい。 本研究の結果から、CD133陽性細胞も従来の純化CD34陽性細胞と同様に安全に移植細胞として利用できることが判明した。移植細胞としての機能も問題なかった。自家移植だけでダブルトランスプラントを施行した症例において、二等分した保存細胞であるにもかかわらず、2回目の移植後の血小板数回復が遅れた。より未熟なCD133陽性細胞と、より成熟したCD34陽性細胞の違いが示されている可能性がある。
|