免疫磁気ビーズを利用したCliniMACSシステムで、造血幹細胞としてCD34陽性あるいはCD133陽性細胞を純化し、小児がん治療の大量化学療法後の造血幹細胞救済療法として臨床応用した。これによって大量化学療法後でも迅速に造血機能を回復させることができた。小児がん患者で実施する大量化学療法は種々の問題を抱えていることが再確認された。移植細胞の処理技術の進歩は移植機会の拡大につながるものの、制がん剤の総投与量の増大は患児に与える傷害が大きく、治療関連死亡が増加する可能性も示唆され、移植細胞の洗練とともに大量化学療法レジメンの確立が重要だと思われる。 小児患者では各種薬剤に対する認容性が高く、造血細胞移植術は比較的安全に施行できると考えられてきた。その結果として、ダブルトランスプラント療法や高用量の制がん剤投与が日常化してきた。しかし、移植術までに強力な化学療法が実施されている分、移植前大量化学療法による毒性はそのときの各種臨床検査でとらえきれないこともあった。 本研究で検討したCD34・CD133抗原は、長期的に造血機能を維持できる造血幹細胞に発現していることは示せたが、腫瘍細胞の混入がない理想的な移植片を作成することについては、残存腫瘍が現在の検索手法ではとらえられないレベルであるため、臨床的に5年〜10年の観察期間を経て結果が得られる。本研究の成果は、今後臨床応用される可能性がある種々の抗体を組み合わせての細胞療法に発展に寄与する。
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