先天性核酸代謝異常症は、精神発達遅滞、自閉症、尿路結石、免疫不全など極めて多彩な臨床症状を示すことが知られているが、その程度はさまざまで特異性に欠けるため診断に苦慮することも多く、原因不明の神経疾患などとして経過観察されていることも予想される。このような疾患では、血液、尿、脳脊髄液といった生体試料での、核酸およびその代謝産物の測定は必要不可欠であり、疾患の診断を始め、病勢の把握、治療状況の評価、重傷度判定、病態解析等に役立てることができるが、1検体のみでの測定では判定困難な場合もあり、また経時的な変化が重要な場合もあるため、繰り返し短時間に行える測定法が望まれる。今回我々は尿酸、キサンチン、ヒポキサンチン、アデノシンといった核酸代謝産物に加え、日常的に臨床の場で使用されるプリン塩基であるテオフィリンと、食物に広く含まれるカフェインを測定対象に加え、タンデム型質量分析計での測定が可能となるよう検討した。まず各プリン塩基の標準検体を作成し、吸光度計を用いた高速液体クロマトグラフィーシステムに注入し、ODSコンベンショナルカラムでの保持時間の検討を行った。質量分析計への導入を考慮し揮発性溶媒であるギ酸アンモニウムを用い、メタノールによるグラジュエントを併用し、各標品において最適条件を検討した。これによりおよそ15分の分析時間で上記6種のプリン塩基の溶出が可能であることが確認出来た。 次にタンデム型質量分析計への導入へ向けて、各標準検体でのイオン化効率の検討を行った。標準検体をエレクトロスプレーイオン化質量分析計へ導入し、マイナスイオン検出条件で検討を行っているが、物質によるイオン化効率に差があり、今後さらに最適条件決定のため検討が必要と思われる。
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