研究概要 |
目的:先天性高乳酸血症は最も頻度の高い先天代謝異常症であるが、現在もその6割は病因不明である。本研究はBlue Native電気泳動(BNPAGE)を用いてその中でも最も頻度の高い呼吸鎖異常症の病因診断を行うことを目的とする。材料:高乳酸血症日本人25症例より得た皮膚線維芽細胞。方法:1.線維芽細胞から精製したミトコンドリア画分を材料とし、4〜13%BN PAGEで展開後、以下を行った。(1)呼吸鎖I〜Vの各種サブユニットに対するモノクローナル抗体を用いたイムノブロット解析を行い、呼吸鎖複合体の量と大きさについて検討する。(2)酵素活性染色を行い、呼吸鎖酵素活性について検討する。2.最後にBN PAGEの結果をin vitro酵素活性の結果と照合し検討した。結果:1.呼吸鎖Iについて、イムノブロット解析で複合体量が著減し活性染色で低下を呈した症例が2例、量・活性共に軽度減少を認めた症例が8例、イムノブロット上異常パターンを認めた症例が2例、Iに加えてII,IVも共に低下した例が1例であり、即ち25例中13例(52%)に呼吸鎖Iの異常を認めた。2.その13例について線維芽細胞を用いたin vitro酵素活性測定を行い3例、他臓器の検索を組み合わせてもう1例の合計4例を呼吸鎖I異常症確実例と診断した。3.BN PAGEの結果から上記に加えてもう2例を呼吸鎖I異常症疑い例と診断した。4.1例においては複数の酵素活性/量が低下しており、POLG変異などミトコンドリア量そのものに異常を来す疾患を中心に今後検索を進める予定である。5.呼吸鎖I異常症確実例4例にmtDNAの異常はなく、いずれも核DNA由来であることが示唆された。結論と考察:BNPAGEは、膜タンパクなどの疎水性大分子を丸ごと解析できる優れた方法であり、イムノブロット解析を用いることで大きさと量が、酵素活性染色にて酵素活性を調べることができる。BN PAGEはミトコンドリア呼吸鎖異常症をはじめとする高乳酸血症の鑑別・スクリーニングに大変有用であると思われ、特に呼吸鎖Iの解析が高乳酸血症解析のキーになると考えられた。
|