研究の目的 血液学的に全く異なった疾患と考えられてきた白血病・MDSと再生不良性貧血の両疾患は、近年両疾患間の移行例が明らかになるにつれて、その境界の不明瞭さが改めて認識されている。両疾患の鑑別診断は通常の血液細胞形態の観察と染色体分析が主体となっているが、実施可能かつ鑑別精度の高い細胞形態のスコアリングシステムは開発されていない。一方で血液細胞の染色体異常が再不貧症例でも報告されるようになっているが、MDSに観察される染色体異常との差異についての議論は未だなされておらず、一定の見解はない。更に治療前後の残存正常造血能の評価方法は確立されておらず、治療中止の指標がない。 診断時骨髄細胞の形態観察と染色体分析・残存造血能の結果を、症例の追跡調査と同期した前方視的研究として行い、以下の3点を達成する。1)再不貧・MDS鑑別細胞形態スコアリングシステムの開発。2)再不貧・MDS症例における白血病化リスクによる染色体異常リスク分類の確立。3)長期細胞培養法を用いた治療前後の残像造血能評システムの開発。 平成16年度の研究成果 小児血液学会再不貧委員会のデータベースを利用して、追跡調査結果から染色体異常症例を抽出し7番染色体・8番染色体異常症例の臨床像を、同じくMDS症例データベースからも同時に抽出して比較した。再不貧治療中に7染色体異常を呈する症例の予後は極めて不良であるが、診断当初からMDS-RAと診断された症例の内、7番染色体異常を呈する症例の予後は造血細胞移植を実施されたことにより、生命予後は改善されている事が判明した。その成果を2005年5月国際MDS会議(長崎)において発表する。
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