研究課題
白血病・MDSと再生不良性貧血の境界の不明瞭さが認識されている。本研究は、診断時骨髄細胞の形態観察と染色体分析・残存造血能の観察を、症例の追跡調査と同期した観察研究として行った。平成19年度の研究成果1)再生不良性貧血からMDSに移行する症例の頻度観察を目的に、小児血液学会再不貧委員会の再不貧データベース(特発性、肝炎後)(1988-2005年1,131症例)の長期観察、治療必要性、予後について検討した。その結果、a.l994年以前に診断された症例からのMDS白血病移行頻度(単純算術頻度)は約7%で有ったが、それ以後は明らかに減少した。b.1994年以後の移行頻度は1.1%と推定された。診断時骨髄染色体分析が1994年以後一般化し、特異な染色体異常症例は診断時に再不貧から除外された。骨髄標本の中央診断は実施されておらず診断の標準化はされていないにもかかわらず、白血病MDS移行症例は減少している。これは治療法の改善適正化による影響が大きいものの、形態診断の影響が限定的である可能性を示している。2)細胞形態スコアリングシステム開発:標本収集の遅滞により本年度は目標を達成できなかった。3)残像造血能評価システムの開発:骨髄細胞の多次元フローサイトメトリー法を用いた造血再構築評価を試みた。対象は、無治療で観察可能な中等症再不貧症例、免疫抑制療法実施前後の重症再不貧症例とした。その結果、診断時には造血細胞(骨髄細胞系列)が著減し、Bリンパ球系列の分化も偏りが観察される。末梢血所見が改善した1年後には造血細胞系列の成熟障害と、リンパ球成熟pathwayの障害も正常化傾向が観察された。この間、従来の骨髄塗抹標本観察では、造血状態の改善は明らかではなかった。従って、造血障害疾患の残像造血能の解析方法として、多次元フローサイトメトリー法は有用な検査法の一つである可能性が示唆された。
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Blood 111・3
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日本小児血液学会雑誌 22・1
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