【目的】 新しい蛋白解析法であるプロテインチップシステムを用いて川崎病の原因、あるいは病態に関連した蛋白質の探索を試みた。 【方法】 対象は急性期(ガンマグロブリン投与前)の川崎病患児14名で、対照として回復期(ガンマグロブリン投与後)の同疾患児、あるいはCRP高値の炎症性疾患羅患児6名、さらにアレルギー性紫斑病の患児2名を加えた。サイファージェン・バイオシステム社製プロテインチップシステムを用いて、それぞれのサンプル血清中の発現蛋白の質量分布を解析した。今回、未知の蛋白を探索するため、三種類のチップ(陽イオン交換チップ、陰イオン交換チップ、金属イオン(銅イオン)チップ)を用い、さらにBinding/Washing Bufferの条件を変えたり、サンプル処理の条件を変更するなどして、網羅的に側定した。目的蛋白質の測定に必要なエネルギー吸収分子は主としてシナピン酸を用いた。飛行型質量分析計(TOF-MS)によって発現蛋白の分布を測定した。得られた結果より、川崎病急性期と回復期の血清での発現蛋白の比較を行った。同様に、CRP陽性炎症性疾患児の血清、アレルギー性紫斑病患児の血清との比較も行った。 【結果】 川崎病の急性期において回復期に比べて、2つのピーク(11.5kD、11.6kD)で発現の増加を認め、逆に1つのピーク(23.5kD)で発現の減少を認めた。しかしながら、川崎病の急性期とCRP高値の炎症性疾患児の血清での蛋白発現を比較したところ、上記の2つのピーク(11.5kD、11.6kD)に明らかな差を認めなかった。今後、差の見られた蛋白の精製・同定とともに、多検体での検証が必要である。
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