研究概要 |
目的: 今年度は片側尿管結紮(UUO)ラットモデルで尿細管・間質の線維化を確認し,降圧剤(アンギオテンシン変換酵素阻害剤,ACEI)の投与量を変化させた単独投与群と対照群での線維化程度の差異を検討する。また,ACEIがHepatocyte growth factor(HGF)を誘導するか否かについて試験的検討を行う。さらに,HGF遺伝子導入を試み,ラット腎組織にヒトHGF発現が認められるかを検討する。 対象と方法: 1.UUOラットモデルの作製:5週齢のSDラット(体重150〜200g、オス)で、左側尿管を結紮し、1週間後屠殺し,腎組織を得た。 2.ACEI(Quinapril)の投与法:UUO作製前日から屠殺当日まで、連日、Quinaprilを投与(対照群:0mg/kg/day,低容量群:3mg/kg/day,中容量群:10mg/kg/day,高容量群:20mg/kg/day)した。 3.HGF遺伝子の導入:ACE阻害剤投与群、非投与群それぞれに対し、ヒトHGF cDNA(2.2kb)を挿入した、pUC-SRa発現ベクター・プラスミドをHVJ-リポゾーム法により、殿筋に週1回投与する。 4.血圧測定、尿蛋白定量 5.HGFとc-METの発現確認 6.腎組織の糸球体病変および間質病変の観察 結果: 1.中および高容量ACEI投与群では、低容量投与群と比較して尿細管萎縮、間質の線維化は有意に抑制された。 2.HGFとc-metの発現については、ACEI投与群で発現が強い傾向にあるが,対照群と有意差を認めなかった。 3.HGF遺伝子の導入により,ラット腎組織にヒトHGFの発現を観察した。 4.血圧測定はQuinapril投与後30分毎に4時間測定したが、低血圧は観察されなかった。 結論: ACEIを中〜高容量投与するとUUOによる尿細管萎縮、間質の線維化は有意に抑制されるが,HGFの誘導はACEI単独投与では有意ではなかった。
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