研究概要 |
先に我々が行った川崎病罹患同胞検体を用いた連鎖解析において、複数の染色体上の候補領域が特定された。それらの領域中に位置する一塩基多型(SNP)を用いた体系的な患者・対照研究を行った。その結果435例の川崎病既往者検体と988例の健常対照検体でのアレル頻度の比較においてx2乗値20.8,p値0.0000051と極めて強い相関を示すSNPを見出すことに成功した。共同研究機関であるカリフォルニア大学サンディエゴ校小児科より提供を受けた209組の米国人川崎病患児とその両親のトリオ検体による伝達不平衡試験によってもこのSNPの川崎病患児への有意に偏った伝達が観察された(x2乗値11.2,p値0.0008)。このSNPは7つの遺伝子が存在する約130,000塩基対からなる連鎖不平衡ブロック上に位置するが、これらの遺伝子に中で末梢血T細胞をイオノマイシン及びPMAにて刺激した際、数倍から十倍発現上昇し、炎症関連分子である可能性が強く示唆されたものについて機能を解析した。まずアレル特異的転写産物定量(ASTQ)の手法を用い、同遺伝子の末梢血単核球における発現が川崎病と相関するアレルでは低下することを明かにした。さらにRNA干渉の手法を用いたJurkat細胞上における同遺伝子のノックダウンにより、同細胞株内でのインターロイキン2の転写量が有意に増加し、逆に過剰発現により有意に低下することを明かにした。以上の結果からこの遺伝子産物はT細胞の活性化を負に制御していると考えられ、SNPによる発現の低下が川崎病における免疫活性化状態と深く関与していることが推察される。
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