2003年に3地域の1歳6ヶ月児約1900名を対象として、テレビ・ビデオ(以下、TV)の視聴実態について質問紙による集団調査を行った結果、長時間視聴児(1日4時間以上)あるいは長時間視聴家庭(8時間以上)の児では有意語出現の遅れが有意に高いことが示唆された。TV長時間視聴と言語発達の遅れとの関連性の因果関係を明らかにするため、下記を行い、因果関係の可能性が示唆された。 1)TV視聴時の親の発話:プレイルームで、7〜24ヶ月の親子14組のTV視聴時及び非視聴時の様子をビデオ記録し、親の発話について解析した。TVが付いている時は付いていない時に較べて親も歌を口ずさんだり微笑むなど好ましい面も観察された。しかし、発話の頻度が平均6.2回/分から4.06回/分に有意に減少し、また、1語文が多く、1回の発話の文節数の中央値も2.7文節から1.5文節に減少し、会話の長さが短縮することが示された。また、TV視聴時はものの名称のみで、動詞や形容詞を用いた状態説明が少ない等、言語的コミュニケーションが乏しくなることが示唆された。更に、TVが付いているとTVを見たままで話し、児の顔や児の方を見ながら話すことが減少していた。親子同時視聴でも長時間視聴が日常化すると言語発達やものの状況理解に遅れを生じる危険性が高まると考えられる。 2)テレビ視聴時の脳機能解析(予備実験):多くの乳幼児が視聴している代表的ビデオソフトを選び、成人が視聴中の前頭葉及び側頭葉の脳血流変化を光トポグラフィーで観察した結果、ビデオソフトの場面と脳血流変化に関連性が見られ、テレビ視聴の乳幼児の発達への影響に、ビデオソフトの内容等の特性も検討する必要性が示された。
|