Pdn/Pdnは無処理でも15%程度神経管閉鎖障害を現し、残る全例は無嗅脳症である。このP面/P面の胎生7.5日にオクラトキシンA(OTA)やバルプロ酸(VPA)を曝露し、胎生18日胎仔の外形を観察すると、神経管閉鎖障害が51.6%や66.7%まで増加した。そのメカニズムを9あるいは10日胚でwhole mount in situ hybridization法で調べると、無処理のPdn/PdnでもFgf8遺伝子発現領域が広がっており、さらにOTAやVPAを処理されたPdn/Pdnでは」Fgf8発現が前神経孔の周囲(anterior neural ridge)や交連板(commissural plate)で強く発現し、発現部位の形態にも差があった。このことから、Fgf8遺伝子発現はGli3遺伝子発現の影響下にあることが明らかになった。また、Gli3遺伝子発現抑制とOTAやVPAの毒性の相乗効果のために、Fgf8遺伝子発現が変動して神経管閉鎖障害を惹起したものと考えた。また、多指症になる無処理のPdn/Pdn11日胚の手板では軸前側AERが肥厚し、その部位に」Fgf8遺伝子が強く発現していた。Fgf8遺伝子は肢芽中胚葉細胞の増殖を促す作用を持つことが報告されていることから、軸前側AERの肥厚部分でFgf8遺伝子が発現していたことは、上記の報告を裏付けるものであった。 このようなGCPSの相同疾患マウスを使った実験から、遺伝子と環境因子の相乗効果で奇形が発症することを示唆された。これは、環境要因による催奇形性における感受性の差の問題を解明する手掛かりになる研究と考えられる。
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