ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)の臨床分離株だけに見られるUL146遺伝子産物の病原性を明らかにする事が最終的な目的であるが、本年度は以下の成果が得られた。 1、これまでにUL146遺伝子内に多くの変異のある事が報告されており、我々はこの変異が8つにグループ分けできる事を明らかにしてきた。 今回はグループ1に属するUL146遺伝子PCR産物を発現ベクターにクローニングし、pET systemで新たに調整したUL146融合タンパク質で、ウサギを免疫し得られた特異抗体を用いて、臨床分離株HCMV感染細胞に対する抗補体間接蛍光抗体法による解析を行った。その結果、UL146タンパク質は感染後期に発現するタンパク質であることを明らかにした。また細胞内局在についての検討から、局在箇所は主に細胞質内であった。さらに、サイクロヘキシミドやアクシノマイシンD処理により、UL146タンパク質の発現は完全に抑制されたことから、このタンパク質はウイルス感染後に合成される新たなタンパク質であることが確認された。 2、UL146遺伝子産物と特定のHCMV性疾患が関連するか否かを検索するために、これまでに患者のコンセンサスを得た上で胎内および新生児HCMV感染患者からのウイルス分離、血清の収集・保存を行い、新たにウイルス分離は6検体、血清は15検体を収集できた。得られた血清中に、UL146タンパク質と特異的に反応する抗体が存在するか否かをウエスターンブロッティングで検索したところ、これまでに1検体が見つかった。現在さらにUL146タンパク質と疾患特異性などについて検討中である。
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