乳幼児の睡眠中の覚醒反応のプロセスとして、ポリグラフ的に皮質レベルでの覚醒反応(cortical arousal)と皮質下(脳幹部)での覚醒反応(subcortical activation)に分類され、皮質下で起こった覚醒反応が皮質に伝達されると考えられている。これまでにブリュッセル自由大学附属小児病院との共同研究でSIDS死亡例では覚醒反応のプロセスに異常がある可能性を指摘してきたが、今年度は覚醒反応発現時の心拍数の変化をSIDS例と健康乳児例で比較することで自律神経系のコントロールを検討し、SIDS死亡例での覚醒反応異常の病態について検討した。ポリグラフ上の覚醒反応の定義は、subcortical activationとは脳波上の変化がなく、NREM睡眠においては体動、呼吸パターンの変化、心拍数の10%以上の増加のうちの2項目、REM睡眠においては体動、心拍数の10%以上の増加の2項目を3秒以上認めるもの、cortical arousalとはNREM睡眠においては体動、呼吸パターンの変化、心拍数の10%以上の増加のうちの2項目、REM睡眠においては体動、心拍数の10%以上の増加の2項目を3秒以上認めるものでしかも脳波の変化を伴うものとした。SIDS死亡例16例と検査時の年齢、性別、睡眠中の体位などを一致させた健康乳児16例においてそれぞれの覚醒反応発現時の心拍数の変化を検討し、自律神経系コントロールに相違があるかどうかを検討した。その結果、SIDS死亡例においてcortrical arousal発現時の心拍数の変化はREM睡眠期で健康乳児よりも有意に少なく、subcortical activation発現時にはNREM睡眠期で心拍数の変化が有意に大きいことが判明した。自律神経系発達の未熟性がSIDS死亡例での覚醒反応プロセスの異常に関与している可能性が示唆された。
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