本研究は(1)妊娠中の母体低蛋白栄養の児に与える影響を明らかにする。(2)高血圧、冠動脈疾患は男性に多いとされているため、胎児胎内プログラミングの発現制御と女性ホルモンの関係を明らかにすることを目的とした。本実験はラットを通常の食餌群とその半分の蛋白質量の食餌群とに分類し、妊娠期間中それぞれの食餌を与えた。生後雌のみを飼育、生後50日目にそれぞれの群のラットを更に卵巣摘出手術群とシャム手術を群に分類し、合計4群の実験モデルを作成した。生後は50日目より25日ごとに血圧測定し、生後175から180日目に安楽死をさせた後、wire myographを用いて、腸間膜動脈の血管内皮細胞機能の評価を行った。また、心臓はホルマリン固定後冠動脈周囲の線維化の観察を行い、4群で比較を行った。その結果、卵巣を摘出された母体低蛋白栄養のラットが早期より他の群のラットより血圧上昇が認められ、最終的には卵巣温存の母体低蛋白栄養ラットも正常食餌群と比較して有意な血圧上昇を認めた。Wire myographの実験結果ではPhenylephrine、U46619 (ThromboxanA2類似薬)に対する収縮反応には変化がなかったが、母体低蛋白栄養ラットのAcetylcholineに対する最大拡張率およびbradykininに対する最大拡張率と感受性に鈍化を認めた。また冠動脈周囲の線維化はbradykininの反応と全く同様に卵巣摘出した母体低蛋白栄養ラット、卵巣温存母体低蛋白栄養ラットの順で有意に線維が進行していた。以上の結果より、妊娠中母体低蛋白栄養は生後の児の高血圧、冠動脈疾患の罹患率を有意に上昇させる可能性があることが示唆され、その発現に性差があるのは卵巣ホルモンが抑制的な働きをしている可能性があることが示唆された。本研究はSociety of gynecological investigation 2005 annual meetingおよび、3rd International Congress on Developmental Origins of Health & Diseaseで発表した。
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