研究課題
前年度までの研究により、新生児仮死と、それに引き続いておこる低酸素性虚血性脳症(hypoxic ischemic encephalopathy-以下HIE)のin vitro modelとして採用したNGF分化PC-12cellに対する鉄-アスコルビン酸(以下Fe-AA)負荷の系において、apoptosisの誘導は30-32℃の低温下でほぼcontrol levelまで著明に抑制され、また、(1)温度は32℃が必要であること、(2)負荷開始後6時間以内に低温にする必要があること、(3)低温は30時間以上続ける必要があること、が明らかとなった。その後は、低温がapoptosis経路のどの部分を抑制し、また、細胞内redox environmentの変化とどのように連動しているのかを解明すべくapoptosis mechanismの探求に進んだ。その結果、現在までに、(1)mitochondria transition poreの開口、(2)cytochrome cのmitochondriaからcytosolへの放出、(3)caspase 3の活性化、のいずれの部分も低温によって抑制されることを見出した。また、細胞内redox environmentを規定しているglutathione(以下GSH)の動態に関しては、分化誘導だけでGSHは次第に低下していくが、低温によってその変化はむしろ促進されること、さらに、それにも関わらず、Fe-AA負荷によるGSH低下、GSSG上昇は37℃に比べ抑制されることも明らかとなった。以上より、今後は、HIEに対する脳低温療法において、鉄キレーターとGSH donorの相乗効果の可能性が期待される。
すべて 2006
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Pediatric research (In press)