研究課題
基盤研究(C)
新生児仮死に続く低酸素性虚血性脳症(hypoxic-ischemic-encephalopathy、以下HIE)のin vitro modelとして採用したNGF分化PC-12 cellに対する鉄-アスコルビン酸(以下Fe-AA)負荷の系において、apoptosisの誘導は30-32℃の低温下でcontrolとほぼ同程度にまで著明に抑制されることを見出し、Acridine orange/Ethidium bromide蛍光染色で37℃に比べ32℃ではapoptosisが有意に減少していることが確認された。さらに(1)mitochondria transition poreの開口は32℃で有意に抑制されていたが、(2)cytochromecのmitochondrlaからcytosolへの放出は、37℃の方が多い傾向はあるが有意差はなく、(3)caspase 3の活性化は両群で差がないことを見出した。また、細胞内redox environmentを規定しているglutathione(以下GSH)の動態に関しては、分化誘導だけでGSHは次第に低下していくが、低温によってその変化はむしろ促進されること、さらに、それにも関わらず、Fe-AA負荷によるGSH低下、GSSG上昇は37℃に比べ抑制され、37℃では負荷48時間でGSH/2GSSG redox pairのhalf-cell reduction potentialは62mV上昇するが32℃では10mVの変化に止まることも明らかとなった。以上より、低温によるapoptosisの抑制にはcaspase independent pathwayの抑制が関与している可能性があること、また、細胞内redox potentialの変化も低温抑制に関わっていることが示唆された。今後は、HIEに対する脳低温療法において、鉄キレーターとGSH donorの相乗効果の可能性が期待される。
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