研究課題
基盤研究(C)
周生期脳損傷の新規治療法として、自己再生能、多分化能をもっ神経幹/前駆細胞移植が有効であるか否かを検討することが本研究の目的である。新生児低酸素性虚血性脳症(hypoxic-ischemic encephalopathy ; HIE)モデルラットを作製し、受傷翌日に神経幹/前駆細胞移植を行い、1週間後に脳梗塞領域を計測した。移植した神経幹/前駆細胞はラット脳内特に梗塞領域に生着しやすい傾向があったが、神経幹/前駆細胞移植による梗塞の軽減効果はみられなかった。一方、神経幹/前駆細胞とともに、発達期脳の細胞環境分子のひとつであるコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの糖鎖を切断する酵素(コンドロイチナーゼ)を脳内に投与すると、意外なことに脳梗塞巣が明らかに減弱することがわかった。一方、コンドロイチナーゼ単独では、効果がなかった。本研究の成果は、新生児仮死の病態に大きく関わる低酸素性虚血性脳症の治療戦略を考えるうえで意義深いと考えられる。これまでに、in vivoの脳虚血モデルにおいて神経幹細胞とコンドロイチナーゼを併用投与することにより脳梗塞が軽減されたという報告はなく、全く新しい知見である。今後は、この機序について詳細に検討していくことが重要であると思われる。また、神経細胞死を抑制する新規分子の探索をめざして、培養系での神経細胞死誘発実験を行った。特に、発達期脳の細胞環境分子のひとつであるコンドロイチン硫酸の糖鎖に着目して、実験を行ったところ、哺乳類の脳では微量構成成分であるCS-Eというグリコサミノグリカンに神経細胞死を抑制する効果があることがわかった。この機序についても今後、検討していく予定である。
すべて 2007 2006 2004 その他
すべて 雑誌論文 (14件) 産業財産権 (3件)
Synapse 61(3)
ページ: 138-149
J. Biol. Chem. 281
ページ: 5982-5991
ページ: 24970-24978
Early Human Development (in press)
Neurosci. Lett. 355
ページ: 61-64
J. Biol. Chem. 279
ページ: 46536-46541
Glycoconjugate J., 21, 53-57, 2004. 21
ページ: 53-57
Glycoconjugate J. 21