研究概要 |
本年度も、前年度と同様にBALB/cマウスの皮膚を用いて、I-A抗原に対する抗体を利用したpanning法によって、90%を越える高い純度のランゲルハンス細胞を単離し、そのサスペンジョンを作成して各種のin vitroの系における実験を行った。前年度では、ランゲルハンス細胞からの各種のサイトカインやケモカインの産生に対するtype I IFNの働きが、脾臓樹状細胞とは大きく異なっていることを見出したため、本年度は、まず、CD40,CD80,CD86といった共刺激分子をはじめ、各種の表面抗原の発現に及ぼすtype I IFNの作用について、フローサイトメトリーを用いて検討を加えた。その結果、これらの共刺激分子の発現は、脾臓樹状細胞の場合にはいずれも亢進し、すでに報告があるように、樹状細胞としての成熟の促進がみられた。ところがランゲルハンス細胞の場合は、type I IFNによってこれらの分子の発現が反対に抑制を受けることを見出した。次に、type I IFNであらかじめ処理した、あるいは処理をしない脾臓樹状細胞をparaformaldehydeで固定し、抗CD3抗体で刺激したT細胞に加えたところ、type I IFNで処理した細胞を加えた方がより大きなT細胞の増殖をもたらした。しかしながら、ランゲルハンス細胞の場合は、type I IFNであらかじめ処理してから固定した方が、T細胞の増殖がより少なくなった。したがって、ランゲルハンス細胞で観察した共刺激分子の発現の修飾が、実際にT細胞の増殖に影響を与えることが示唆され、type I IFNがそれを負に制御していることがわかった。
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