研究課題
基盤研究(C)
経皮ペプチド免疫療法(PPI)は、角質層を剥離した皮膚にペプチドを貼付することによって強力な細胞障害性リンパ球(CTL)反応を誘導する簡便で非侵襲的な免疫アプローチである。我々は、角層バリア破壊の後のヒトの皮膚では、表皮のランゲルハンス細胞はHLAと活性化分子の発現を増強して機能的に成熟し樹状突起の数を減らして遊走することを示した。さらにHLAクラスI拘束性の抗原ペプチドをもちいたPPIによりMHC-ペプチドテトラマー/ペンタマー陽性でIFN-γ産生性のCD8+細胞が末梢血中に出現した。メラノーマ関連のペプチドを用いたPPIによる実際の臨床試験では、7人のメラノーマ患者のうちの4人で病変のサイズを減らしたり腫瘍の更なる出現を抑制した。これらの臨床的効果は、縮小しつつある病変にテトラマー/ペンタマー陽性でin vitroにおける細胞障害性活性を有するCD8陽性T細胞が浸潤することによりもたらされることがわかった。PPIの副作用としてはメラノーマ患者での、白斑の出現を除いて、局所的にも全身にも毒性または自己免疫性を誘導しなかった。これらの結果からPPIは癌治療の臨床における新しい治療戦略となり得ることが示された。今回のメラノーマ患者における臨床試験の治療の効率化のためにはCTLの病変部位への浸潤が重要な要素となる。近年の研究でリンパ球の病巣への浸潤にケモカインとその受容体の発現が重要な働きをすることがわかってきている。そこで、今回の臨床試験への応用として、まずリンパ球の単クローン性の増殖疾患である皮膚のリンパ腫においてケモカインの発現が、病巣へのリンパ球浸潤にどのように影響しているかを調べた。その結果、リンパ腫においては、その細胞起源となるリンパ球の性質を反映しつつ、おのおのの疾患での病期の進行状態にあわせてダイナミックに発現が変化していくことがわかった。今後はこの知見をいかして、メラノーマの臨床試験に応用していく予定である。
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Am J Surg Pathol (In press)
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