研究概要 |
RNAiとは、標的である内在性のmRNAに相同な二本鎖RNAを細胞内に導入して、標的遺伝子の発現抑制を起こす現象として知られている。この現象は多細胞生物にはきわめて普遍的な生命現象であり、ほ乳類でも保存されている。特異的遺伝子発現抑制のためRNAiの応用技術が急速に開発されており創薬研究に盛んに用いられている。我々は、尋常性乾癬の皮疹部にみられる毛細血管の拡張や伸長、増殖サイクルに入った血管内皮細胞の存在より、血管異常に血管新生因子が関与していると考え、本疾患を血管新生病と位置付け血管新生因子をRNAi技術の応用により発現抑制する新しい治療法の確立を目指した。注目した血管新生因子は、vascular endothelial growth factor(VEGF)とplacental growth factor(PIGF)で、これらの蛋白発現を検討した。乾癬病変部、無疹部、正常人の皮膚組織から可溶性蛋白を抽出し、ELISA法でVEGF, PIGFの蛋白濃度を測定したところ乾癬病変部では、無疹部、正常皮膚に比較して有意に高かった。さらに血清中のVEGF濃度も乾癬患者群で有為に上昇していた。そこでこれらの病変部で高発現し、かつ正常皮膚では検出されない血管新生因子を標的にsiRNAを設計した。これと同時にsiRNAを局所に安定かつ効率的に運搬するための新しい基剤(ドラッグデリバリーシステム)を作製、検討中である。
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