研究概要 |
メラノーマワクチン療法の有効性を改善するためには免疫エスケープ現象の解明とその対応が重要である。エスケープ機序は(1)抗原をペプチドに分解してHLA Class Iに提示するまでの過程と(2)HLA Class Iが細胞傷害性T細胞にペプチドを提示する過程に大別される。そこで本研究ではこれらの過程に存在する分子群(第1過程:TAP-1,TAP-2,LMP-2,LMP-7,LMP-10,Z, Delta, Tapacin, Calnexin, Calreticulin,、第2過程:HLA Class I-heavy chain, HLA Class 1-light chain (beta2-microglobulin))対するモノクローナル抗体がホルマリン固定パラフィン包埋切片上でも染色できるように種々の方法を用いて検討した。 まず、正常皮膚組織のホルマリン固定パラフィン包埋切片標本を用いて検討した。抗原賦活化はマイクロウェイブ(citrate buffer pH6またはpH7)法やオートクレイブ法を用い、抗体の濃度設定を行い、それぞれの至適条件を決定した。 その結果、HLA Class I, beta2-microglobulinは細胞膜、その他の分子群は細胞質に明瞭に陽性所見が得られた。従ってこれらの抗体を用いてレトロスペクティブな解析が可能となった。 メラノーマ組織を用いた予備実験ではメラノーマ細胞にはDeltaとCalreticulinの発現が高頻度に認められたが、HLA Class I-heavy chain, beta2-microglobulin, TAP-1,TAP-2は発現の低下が著明であった。その他の分子はその中間程度の発現であった。 これらの結果は細胞傷害性T細胞にペプチドを提示する場合にメラノーマ細胞におけるHLA Class Iは必須であるが、その発現に最も影響している分子はTAP-1とTAP-2であることが示唆された。 次年度はメラノーマ症例や色素細胞母斑症例を多数検討し、臨床病理学的因子との相関性を検討する予定である。さらには、培養メラノーマ細胞を用いてこれらの分子発現に及ぼすサイトカインの影響を検討する予定である。
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