研究概要 |
現在のところ、天疱瘡発症感受性遺伝子としてconsensusがあるのはHLA-DRB1,-DQB1のみである。しかし近年のデータからその他にも感受性遺伝子が存在する可能性が示唆されている。そこで尋常性天疱瘡(PV)および落葉状天疱瘡(PF)患者において候補領域解析を行うために特定の領域の単一塩基多型(single nucleotide polymorphism, SNP)を発見することを目的とした。候補領域としては下記の理由によりDesmoglein(DSG)cluster(18q12)を選択した。 我々は,PVとHLA-DRB1^*04/DRB1^*14遺伝子との他民族と共通する強い相関を明らかにしているため、当該課題においてもまず、HLAのタイピングを施行した。厚生労働省班会議の協力を得て、全国9施設より144名の天疱瘡患者血液およびDNAを収集しえた。そのうち102名のHLA-A,-B,-DRのタイピングを施行したところ既報告どおりPVとHLA-DR遺伝子との強い相関が認められ、PV関連HLA対立遺伝子が同定できた。 次にDSG cluster内の新規SNP発見のためDSG1、DSG4における全エクソンの塩基配列決定を施行した。天疱瘡患者8名および健常人コントロール8名についての検索においてデータベース上既知のSNPを確認しえたが、新規SNPを認めなかった。フランス人、チュニジア人においてPFとの関連が報告されているDSG1 T809CSNPについては未だ日本人公的データベースには登録されていないが、今回日本人患者、対照群ともに確認した。次年度に検索数を増やして頻度を算定することにより、特定のHLAを有する患者にこの多型が認められるかを検討したい。以上の検討によりHLAと特定の多型をもつ自己抗原との結合が患者T細胞を刺激し、自己免疫現象を惹起しうるという仮説を立証しうると考えている。
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