研究課題/領域番号 |
16591114
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
小林 信彦 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (70316074)
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研究分担者 |
森 俊雄 奈良県立医科大学, 医学部, 助教授 (10115280)
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キーワード | トリコチオディストロフィー / TFIIH / DNA修復 / 発癌 / シクロブタン型ダイマー / (6-4)型ダイマー / ELISA / 免疫蛍光染色 |
研究概要 |
紫外線高感受性トリコチオディストロフィー(TTD)患者の大部分は色素性乾皮症(XP)D群遺伝子変異により発症する。しかし、原因遺伝子が共通で、同じくDNA修復異常を持つXPとは異なり、TTDでは高発癌性はみられない。修復欠損があるにも関わらずTTDが発癌を回避し得る機序を解明するため、我々はTTDの修復異常およびXPDとの差異について解析してきた。そして、3種類のTTD細胞を用いて、TTDの修復欠損が、TFIIHの発現量低下およびDNA損傷への集積阻害によることを発見した。本年度はさらに、複数のTTDおよびXPD細胞を用いて、上記の機序がTTDに普遍的かつ特異的であることを確認した。TTD細胞はTTD10VI(R658H)、XPD細胞はXP1NE(G47R)、XP22VI(R683W)を用いた。紫外線感受性はMTSアッセイ、DNA修復能は研究分担者の森が樹立した特異抗体を応用したELISA法により定量した。さらに、核内の限局領域に誘発したDNA損傷の修復とその過程におけるTFIIHの集積を免疫蛍光染色法により可視化した。その結果、全てのTTD、XPD細胞は紫外線感受性であり、シクロブタン型および(6-4)型両ダイマーの修復が欠損していた。TTD10VIでは、DNA損傷へのTFIIHの集積阻害がみられた。XPB遺伝子に変異を持つTTD6VIでも同様の集積阻害を確認し、TFIIHの集積欠損がTTDに普遍的であることがわかった。一方、XPDでは、XPD蛋白のN末端近傍に変異があり、その発現量の減少が予測されるXP1NEではDNA損傷に集積するTFIIH量は少ないが、C末端側に変異を持つXP22VIでは、正常細胞と同程度にTFIIHは集積し、修復欠陥は酵素活性の低下下によることが示唆された。次年度は、TTD、XPDにおける、転写因子としてのTFIIHの異常について解析する。
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