研究概要 |
1.本年度の研究でまず行ったことは、FucT-IVとVIIのcDNAをトランスフェクトしたヒトリンパ球系cell line(FucT-IV transfectant, FecT-VII transfectant)を用いて、各々のFucTの発現を酵素組織化学的に検出出来るシステムを確立することであった。これについては種々染色条件を検討した結果、安定して発現を検出することが可能となった。その結果、FucT-IVトランスフェクタントではFucT-IVの発現とともにE-セレクチンリガンド(ESL)のみが発現するのに対し、FucT-VIIトランスフェクタントではESLとCLAがともに発現してくることが明らかとなった。 2.次いで、ヒト末梢血単核球(PBMC)よりナイーブCD4^+T細胞を分離後、抗CD3抗体で刺激することによりメモリーT細胞に分化させる過程において、FucT-IVとFucT-VIIがどのように発現してくるかの検討を行った。 FucT-VIIはPBMC分離直後には認められず、活性化により細胞質に発現してくるのに対し、FucT-IV発現は分離直後においても認められた。しかし、酵素組織化学的にFucT-IVの発現を安定して検出するのはかなり技術的に難しいことも判明した。すなわち刺激に用いている抗CD3抗体が細胞質内のFucT-IVの発現の検出に影響を与えるため、現在安定して発現を検出出来るシステムを検討中である。 3.FucT-IVの発現が十分に安定していないため、上記#2の実験系を用いて、Th1あるいはTh2に分化したCD4^+T細胞(Th1,Th2)におけるESL, CLA, CCD-4の発現の検討を行った。その結果、Th1でもTh2でも、ESL^+CCR4^+という皮膚へ遊走しやすい表面形質を獲得するためには、ともに反対のサイトカイン環境(e.g.Th1ならTh2環境、Th2ならTh1環境)が必要なことが分かった。
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