研究概要 |
悪性黒色腫の約半数に認められる変異BRAF^<V600E>に対して、特異的に作用するshRNA発現レンチウイルスベクターをBRAF^<V600E>変異陽性の悪性黒色腫細胞株に感染させ、MAPK活性に与える影響、増殖能及び浸潤能に与える影響を検討した。BRAF^<V600E>発現抑制に伴い、BRAF^<V600E>変異陽性悪性黒色腫細胞株は、in vitro及びin vivoおいて有意な細胞増殖抑制効果と、ERKリン酸化の抑制を示したが、変異陰性株では認めなかった。一方、BRAF^<V600E>RNAiは、matrigel invasion assayにおいて有意な浸潤能抑制効果を示し、MMP-2の活性低下とintegrin β1の発現低下を伴った。以上の結果から、変異BRAF^<V600E>は、悪性黒色腫の悪性形質に関連した遺伝子異常であり、分子標的治療の候補になりうることが示された(Oncogene 23:6031-6039,2004)。 一方、Skp2は、p27^<kipl>のユビキチンリガーゼとして、その分解を誘導する作用を持つが、多くの癌でSkp2の発現元進に伴うp27^<kipl>タンパクの低下が認められることから、癌の悪性形質との関連が示唆されている。そこで、skp2を標的とするRNAiをskp2高発現細胞株に誘導して、その細胞増殖に与える影響を調べた。Skp2遣伝子増幅を持つ肺癌細胞株に対して、Skp2 shRNA発現レンチウイルスペクターを感染させたところ、Skp2の低下に相関して、p27^<kipl>タンパクの増加と細胞増殖抑制効果およびG1期停止効果を認めた。また、免疫不全マウスの皮下移植モデルにおいて、Skp2 shRNA発現アデノウイルスペクターの腫瘍内投与は、コントロールウイルスに比べて、有意な腫瘍増殖抑制効果を示した(Gene Therapy 12:95-100,2005)。 また、変異BRAF^<V600E>とSkp2発現増加の両者を持つ悪性黒色腫細胞株に対して、両者のshRNAを同時に発現するレンチウイルスベクターを感染させ、細胞増殖抑制効果および浸潤能に与える影響を検討したところ、変異BRAF^<V600E>単独抑制またはSkp2単独抑制群に比較して、両者同時抑制群は、有意な抑制効果を示し、単独抑制群に比べて強いp27^<kipl>lの増加を認めた。以上から、複数の遺伝子異常を持つ癌細胞株における変異BRAF^<V600E>・Skp2同時抑制効果の有用性が示された(lnt J Cancer 118:472-476,2006)。
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