アトピー性皮膚炎の乳児期での発症が予測できるかについて、 1)新生児における角層水分量の測定 2)新生児における経表皮水分蒸散量の測定 3)アトピー性皮膚炎(湿疹)の発症の有無の予後調査 4)角層サンプルからのスフィンゴミエリンデアシラーゼ活性の検討 を行った。その結果、 生後1日目に角層の採取を行えた新生児は15名であったが、郵送によるアンケート調査で湿疹の有無について回答が得られたのは10名であった。そのうち、湿疹を発症した児は8名で、2名は湿疹を認めなかった。成人のアトピー性皮膚炎患者の角層において、その活性の亢進が確認されている、スフィンゴミエリンデアシラーゼ活性を測定したところ、経表皮水分喪失量と湿疹を発症した児の間には関連性を認めたにもかかわらず、酵素活性と湿疹発症の予後との相関は明らかではなかった。また角層水分量と酵素活性の間にも相関は見られなかった。 以上より、今回の検討数が十分ではないために結論することはできないが、新生児では一般にスフィンゴミエリンデアシラーゼ活性が成人に比べ高値であり、ばらつきが大きく、本酵素の生理学的意義は成人と新生児あるいは乳児では異なっている可能性が示唆された。
|