研究概要 |
マウスの色素遺伝子、ピンクアイドダイリューション(p)のメラニン生成制御機構について細胞生物学的に調べた。電子顕微鏡観察からピンクアイドダイリューション(p/p)マウス由来の培養表皮メラノブラストは野生型のブラック(P/P)マウス由来の培養表皮メラノサイトに比べミトコンドリアを多く持つことがわかった。ミトコンドリアの脱共役剤である2,4-ジニトロフェノール(DNP)をメラノサイト増殖培養液に加えて培養したところ、p/pマウスで表皮メラノサイトの分化が誘導され、DNPの濃度に依存してメラノブラストとメラノサイトの数も増加した。これらのことより、p/pマウスではメラノブラスト・メラノサイトの増殖とメラノサイトの分化にミトコンドリアが関係している可能性が示唆された。また、アグチ(A)遺伝子の発現がマウスの発生のいつ頃から,真皮あるいは表皮でみられるかを、アグチ遺伝子の特異的なプライマーを用いてRT-PCR法により調べた。その結果、アグチ遺伝子は生後0.5日から真皮でのみ発現が見られ、3.5日で最大になることがわかった。この真皮でのアグチ遺伝子の発現が表皮のメラノサイトにおけるフェオメラニン形成に関与していると考えられる。 メラノコルチン1レセプター(MC1R)のホモ接合体(HM)およびヘテロ接合体(HT)を持ったヒトの皮膚が野生型(WT)のヒトに比べて、紫外線に対する応答に違いがあるか否かを、皮膚のDNA損傷とp53変異およびそのメラニン含量を測定することにより調べた。その結果、UVB照射前の皮膚では、HMはWTに比べて4-AHP値(フェオメラニン量)が多かった。WT、HMともにUVB照射前後で、PTCA(ユーメラニン量)、4-AHP値が増加し、特に4-AHPで有意な差(p<0.05)が見られた。WTとHMを合わせた群でUVB照射前後を見てみると、PTCA、4-AHPともに有意な差で増加していた。しかしながら、最小紅斑量やDNAの損傷マーカーであるシクロブタンピリミジンダイマー量やがん抑制遺伝子であるp53ともに有意な差が見られなかった。以上、UVB照射によりWT、HTともにメラニン含量の増加が見られたが、MC1R変異の違いではUVBに対する応答に違いは見られなかった。
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