研究課題/領域番号 |
16591125
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
山本 直樹 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (70312296)
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研究分担者 |
柏 淳 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助手 (10301227)
井上 晃 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (50109857)
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キーワード | D-セリン / 統合失調症 / NMDA受容体 / グルタミン酸 |
研究概要 |
脳内在性D-セリンによるNMDA型グルタミン酸受容体の作用増強が統合失調症の既存抗精神病薬に抵抗性の症状の改善をもたらす可能性が推測される。本研究では、シナプス間隙におけるD-セリン濃度の制御およびD-セリンの生合成・代謝にかかわる分子機構を明らかにすることによって、統合失調症の新規治療薬をスクリーニングするための標的分子候補を提供することを最終目標としている。今年度は昨年に引きつづきこのような治療薬標的候補分子のひとつであるD-セリン再取り込み調節因子Dsm-1による細胞外D-セリン濃度調節機構の検討およびD-セリン応答遺伝子dsr-2のゲノム上の構造解析をおこなった。ツメガエル卵母細胞発現系をもちいてDsm-1蛋白質によるD-セリン再取り込み調節のkineticsおよび基質アミノ酸選択性のプロファイルが得られた。さらに、Dsm-1蛋白質の哺乳動物培養細胞での発現実験から細胞内局在が詳細に明らかとなった。また、dsr-2の遺伝子解析から、neurexin 3遺伝子のintron部位に一致した特徴的な共通ゲノム構造が種差を超えて保存されていることがあきらかとなった。さらに、発達に依存した脳内発現分布からdsr-2がD-セリンの機能制御にかかわる応答遺伝子である可能性が示された。これらの新たな知見に基づいて、Dsm-1、dsr-2を含むD-セリン脳内代謝にかかわる分子を標的とした、D-セリン調節によるNMDA受容体機能を増強する作用をもった新規統合失調症治療薬のスクリーニングを開始することが可能となった。また、今後これらの遺伝子の一塩基多型解析研究や遺伝子改変動物をもちいた行動解析を推進することによって、統合失調症の生物学的診断方法の開発への応用が期待できる。
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